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父の話-一言も怒られたことのなかった自分(3) [父の話]

ほろ苦い思い出。 

そう言えば、私は父に怒られたことがなかった。多分なかったと思う。

大学時代、学生仲間でドライブに行った。4人で近郊の山に行った。運悪く、その日の曇り空は、山道に入った我々の車を追いかけてくるように雪に変わり、1時間後、大雪になった

辺り一面はまさに銀世界。林道の山道は車一台、人っ子一人いなかった。

雪は外界の音を一切消した。静寂の音だけが我々の耳に届いた。それはガード下の電車が通り過ぎていくあの音に似ていた。自分の周りの事柄すべてを完全に遮断していた。不気味な静けさ、外界との交わりが絶たれ、おれたちはどこにいるのだろう。そんな真っ白な世界に吸い込まれたことに、我々は誰も気がつかなかった。

1時間後、我々の車は大岩にぶつかり、3人は車外に放り出され、一瞬気を失った。我に帰ったとき、運転手はハンドルを握ったまま谷まで落ちていったのが見えた

悪運強い我々は、奇跡的に全員軽傷を負っただけで済んだ。

全員雪の林道を黙々と歩いた。びしょびしょになりながら、電話のある町まで2時間かけて下山した。車長は半分に圧縮された。皆、茫然自失だった。

話を聞いた父は、事故処理を淡々とやっていた。怒られることもなかったが、一言も言葉をかけてはこなかった。その後、その事件は全くもって家族の中では話題には登らなかったし、父からおとがめを受けることもなかった。

きっと彼は心の中で苦虫を潰していたのかもしれないが、私だったら、息子のホッペタの一つぐらいは殴っていたろう。云々では問題山積だが、彼はある意味、非常に辛抱強い人間だったんだと思う。

そんな彼の足元にも及ばない自分が、今ここにいる


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