13回忌 [父の話]
2018.7.28
こんにちは。
台風が近づいている。間断なく雨は降り続け、今は激しさを増している。夏の雨は湿気を呼ぶ。ちょっと居眠りをしようものなら汗だくだ。今回は関東地方、我在住の千葉に近いところを通り西に向かう。
普通、台風は西から東に向かう。古今東西、古の昔から自然現象はそうなっている。ドラゴンボールのベジータがあらわれない限り、それを逆らって進むわけがない。それが自然現象というものだ。
ところが、今回は地球の自転に逆らって進むタイフーン。やはり異常気象そのものだ。
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今年9月で亡き父の13回忌となる。
平成18年没だから、正確には丸12年となった。人間は生きている以上、いつかは死ぬ。
いつかは死ぬのだけれど、若いころはそんなことは全く考えないのは、あなたも私も皆同じ。
幸いにして、それはとてもいいことだ。
何でも前向きに考えられる。将来はああなろう、こうなろうと思いを巡らせる。
十人十色というが、人は皆それぞれの環境の中で、それぞれの夢と希望を持ち歩き続ける。それが叶う人もいれば、叶わぬ人もいる。それも十人十色だ。
夢と希望が叶う人も叶わぬ人も、その人だけの力ではあり得ない。誰か周りの人間の手助けがある。それを「巡り合い」というが、巡り合いがよい人も悪い人もいる。それもまた十人十色だ。
あるとき、銀座の千疋屋の店先に立った。その店は今もあるが、銀座四丁目から2ブロックだけ有楽町寄りのところにある。歩道からすぐ商品が並ぶ風景は、ちょうど町の八百屋さんみたいな雰囲気があった。店には多くの客がいた。
いきなり、店の奥からグレーの背広を来た紳士が店の外に出て来た。そっと私の横に立ったその紳士はいんぎんに胸ポケットから何かを出した。
紳士「私、山田と申します」
その名刺は私の目の前を通り過ぎ、父の前に差し出された。
私たちは彼を呼んだ覚えもない。ただ、店の前に立っただけだ。
その名刺には、「千疋屋・・・」と書いてあった。
もちろん、千疋屋でメロンを買い求めに来たのだが、たった2~3秒、店の前に立っただけであった。
これは前にも書いたと思うが、別に自慢話でも何でもない。その紳士は「上客」だと思ったのだろうか、失礼があってはいけないとでも思ったのであろうか。
私は父に聞いた。
「前に来たことあるの?」
父「いや、初めてだ」
父はチビでデブで、お世辞にも決してダンディーとは言えるような外見ではなかった。
悔しいことに、年齢とキャリアを重ねることによる威厳が備わっていた。
私はとうに父の年齢を過ぎた。
千疋屋の店頭に立っても誰も歩み寄ってはこない悔しさを、13年目にしてまた思い出してしまった。
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