母の話(10)-入浴をする [母のこと]
2016.11.18
週に1度の幸せ
母を入浴させる。週にたったの1回だけど、母も私も精一杯。
暖かな日々はよかったけれど、だんだんと寒くなってきた。シャワーを全開にして、浴室内を温かくして入るのも限界になってきた。意を決して浴槽に入ってもらう段取りをした。もともと父の介護時代にあつらえたものなので、使い勝手は普通の浴槽とは違って、座位を保ってからゆっくりと湯船につかれるようになっている。
とは言え、こちらも準備は十分にしなければならない。海パンいっちょうで母を湯船に招き入れる。そして、そのまま頭から体を洗っていく。本人もやはり気持ちよさそうだ。
現役時代、彼女は風呂には積極的ではなかった。下町のアパート暮らし、ちょっと前まであった原宿の同潤会アパートと同じ建ち住まい。しかし、風呂はない。銭湯に行かなければならないから、必然的に回数が少なくなったんだろう。
そんな母から間違いなく、私は生まれた。シワシワになった体。その割には形として残っている胸。そう思うと、やはりじゃけんにはできない。
気がつくと体の続く限りと思う介護に踏み込んだ私がいた。
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