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学生村(22)-秋の気配 [学生村]

2017.8.22


8月の中旬を過ぎた夏。下界ではまだ暑いのが通例。しかし、高原のお盆過ぎは静かだ。ビーサンを履いてアスファルトを歩いていくと、ペッタン、ペッタン・・・・。そんな小さな音が周りの木々に響きわたる。その音しか音らしいものは聞こえない。そんな静寂の中の高原は、夏の残り香を強烈に思い出させる。しかしながら、勉強には絶好のシーズンだ。


泊まり客も一人減り、二人減りして、今年は自分が最後かとつぶやきながらも勉強に勤しむ。そんな「あっしには、かかわりのないことでござんす」的な気持ちにさせる秋を、実は妙に気に入っていた。


今ごろはそばの花が終わりに近づき、咲いてはいるが、咲き誇ってはいない状態で、それがまた秋の気配が少しずつ自分の周りに音もなく忍んでくるようで、夜、立ち机に座るころ、さほど寒くもないのに、ブルッと身震いをするのは、いつもの秋の始まりの私の作法となっていた。


8月の後半はスズムシは息絶えコオロギが全盛で泣き叫んでいる。彼らにとっては短い秋。だから必死に鳴いて、異性を求め、次世代に命をつないでいく。だから、このうるささは、6つある部屋に一人しか残っていない私にとっては、ほどよく話相手になってくれている。


朝は寒い、8月下旬だというのに薪ストーブの登場だ。ガスでスイッチをパチンではないので、新聞紙を丸め、火をつけ、細い薪を新聞紙の火種が消えないように井桁に組ながら少しずつくべ、煙にむせながら少しずつ大きな太い木を順番にくべていく。薪で火を起こすことがなくなってから「くべる」という言葉はあまり使わなくなった。


誰もいないわけだから、私しかストーブを付ける人間がいないわけで、ひたすらに薪に火が付くことに専念する朝であった。

 

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