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学生村(13)-ほっと一息 [学生村]

2017.4.29


やっと見覚えのある小川の吊り橋が見えてきた。昼ならば透きとおった水、キラキラと太陽の光でまぶしい川面、鳥の声が見え聞こえする小川であったが、今はそんな風景もなく、ただただ闇夜となってしまった吊り橋を恐る恐る渡って家路に急ぐのみであった。

吊り橋を渡り切り、熊笹に腰まで覆われた小道を5分ほど登り切ったところが山村荘の裏手の入り口であり、今まで必死で、真っ暗になったら遭難するじゃないかと思ったりした自分と、お風呂の煙であろうか、夕飯の煮炊きをしている煙であろうか、そんな自分の思いとお構いなしに、のんびりと立ち上っているのを見るにつけ、遭難するんじゃないかと思った自分が都会っ子のぼんぼんに見え、妙に恥ずかしくなったりした。


宿の玄関ドアを引いた。力一杯引いた。このドアの立て付けはかなり悪く、いつも思いっきり引かないと開かないドアであった。


「あらっ、遅かったね。どこさ行ってなさった? 心配してったさ」

「うん、ただいま。腹へった」

「できてる、できてる。はよう、食べて、たくさんあるよ」

そんなのんびりした会話をほっとしながら宿屋の叔母さんと交わし、私は夕食の膳に加わった。


ほかの学生3人も、

「どこまで行っていたの」

「声かけてくれれば一緒に行ったのに。」

「もうやることもないし、今年最後の夏の思い出をつくりたいから、いつでも声かけてね」

怖い思いをしたことなど少しも気取られないよう平然と、そのうれしいお言葉を聞きながら夕食の膳についた。


本当に夕暮れ時の山道は一人で行くもんじゃない、肝を冷やした



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